透視図法とは、なんぞや
建築やアカデミックなところでは違う意味もあるでしょうが、
こと絵を描く場合において、透視図法は作画コストを下げるテクニックです。
厳密には人の視界は歪んでいるので、絵もそれを再現した方がリアリティは高く感じられます。(ちなみにですが、出力のサイズが大きければ直線で構成していても、他のモノと同様に見る人間の目によって勝手に歪みます)
図はすこしおおげさですが、肉眼の歪みを表しています。
視界の水平と垂直のラインはほぼまっすぐに見えます。また視界の中心は歪みがすくなく、視界の端にいく程、歪みが大きくなります。
「焦点」として人が集中して見る部分は本当に点に近いです。
意識して範囲で見たとしても、その範囲は限られています。
実際の人間の視界は、左右で180度、上下で130度ぐらいです。
まっすぐな柱などを正面でなく、視界の端でなんとなく見てみると歪みがわかると思います。
しかしながら、歪んだ絵を描くのは大変です。
加減が微妙ですし、直線定規も使えないので手間です。
特に個人ではなく、複数で共同制作する場合はわかりやすいルールがあった方が進めやすいですよね。そこで用いられているのが透視図法です。
1点透視図法
1点透視図法は消失点を画面内にとり、奥に伸びていく構図に用いられることが多いです。
ようは、奥行きを表現するための手法。
透視図法の用語説明
消失点
消失点はその方向に伸びていく線が見えなくなる点です。
たとえば、めちゃくちゃ長い道とか、海も地平線でその先が見えなくなりますね。
アイレベル
アイレベルはカメラの高さです。目線の高さ、と考えても良いです。
消失点はアイレベル上にあります。(3点からアイレベル上以外にも点ができます)
いろんな高さに設定できるのですが、キャラの胸の高さあたりに設定されていることも多いです。
動きのある絵だと、高いところから見下ろしたり、低いところから見上げたりする構図もあります。アイレベルは必ず画面内に収まるというわけでもありません。
2点透視図法
2点透視図法は、1点透視図法よりも横の広がりを持たせつつ、奥行きを表現することができます。
消失点は画面外にあることも多いです。
使用頻度が高いです。特に室内の作画で使われていることが多いです。
画像だと少し見にくくなってしまいましたが、赤い線が交わっている左右の赤い2点が消失点になります。青い水平な線がアイレベルです。
3点透視図法
3点透視図法は、2点透視図法の横の展開を持ちつつ、上や下への広がりが感じられます。
実際には、3点目を上にとって建物などの大きさを表すときに使われることが多いです。
画像では左右の赤い線が交わる2点と、上の交点が消失点です。
すこし余談になりますが、実は上の消失点は「消失点」として建物等のパースを沿わせるのは誤りと言われることもあります。ただ、作画のために便宜上で伸ばす点を決めている、とすれば、問題はないと思います。詳しい理由はこの記事では割愛(ややこしいので)
5点透視図法
いよいよ5点透視図法です。(4点、と呼ばれることもあるようです)
5点はほとんど球体です。3点で上に点を作ったら、下にも消失点を作って、それぞれの消失点を結ぶとこうなります。中心の交点も点として数えます。
5点あるせいで、ほとんど直線で構成することが難しくなりましたね。
ところで、この5点透視図法ですが、見覚えがありませんか?
実は冒頭の図の「肉眼の歪み」に似ています。
1・2・3点透視図法は、最初の章でも説明したように、作画を簡略化するために用いられます。
ところが消失点が増えて5点になったところで、直線のみで構成することが難しくなり、肉眼での見え方(歪み)に近くなるのです。
なので5点透視図法は、他の透視図法のようにカジュアルには使われていません。
かなり特殊な技法になりますね。
上下左右、どの方向を見ても奥に広がりがあるような空間を表現することができます。
まとめ
ここまで散々透視図法のことを書いておいてなんなんですが、
実をいうと私自身は透視図法を使って描くことをあまり好みません。
個人的な趣味によるせいなのですが……。
ただ、端から理解しようとしないでわかったつもりで描くのと、理屈を理解しているのではスタンスが違いますよね。
透視図法に走りすぎて、絵そのものと向き合っていないと、それはそれで問題ですが、基本的に知っておいて損はない知識なのは間違いありません。
知らなかった方は、これを機に透視図法の知識を整理するのもいいかもしれませんね!
(私も美術の時間に習ったことはあったのですが、曖昧な記憶と化していたので、描くようになってから勉強し直しました)